2011年7月29日金曜日

冠動脈疾患リスク

12のコホート研究のデータに基づいて絶対リスク評価
チャートを作成している。興味深いのは、冠動脈疾患リスクの高い北欧地域とリスクの低い地中海
沿岸地域を区別していることである。
わが国でも最近では、疫学研究の結果に基づき複数の絶対リスク評価チャートが示されている。
しかし、これらのチャートのエンドポイントは冠動脈疾患死や全心血管疾患死であったり、さらに脳
卒中や冠インターベンションを加えたものがあるなど異なっている。また、対象とした集団の特徴
によって絶対リスクが異なってくることに注意が必要となる。
そのため、ガイドラインにおける絶対リスク評価は、標準的な日本人を代表する大規模集団を高
い追跡率でフォローアップした質の高いコホートで、既知のリスク因子をすべて評価に含めたデー
タに基づいて行う必要があり、現時点でこの条件を満たしているのはNIPPON DATA80だと考え
られるという。NIPPON DATA80は1980年に全国から無作為に選んだ300地域に住む30歳以
上の9216例を対象としたコホート研究で、参加率は75%、19年後の追跡率は91%と、その研
究の質は非常に高い。リスク因子として、性別、年齢、総コレステロール、収縮期血圧、随時血糖
値、喫煙習慣を調査し、冠動脈疾患死の絶対リスクを評価している。
絶対リスク評価を行う際には、ハイリスクの基準をどう設定するかが課題の1つとなる。わが国
の冠動脈疾患死のリスクは米国に比べると低いため、脳卒中死を含む心血管死のリスクが5%
以上をハイリスクとする欧州の低リスク地域の基準が参考になるとの考えを示した。また、わが国
では脳卒中を含む心血管疾患とコレステロール値の関連性を明示したエビデンスはないこと、冠
動脈疾患死の発症リスクは脳卒中死の半分強であることなどを考慮し、新しいガイドラインでは冠
動脈疾患死のリスクが2%以上の場合に高リスク、0.5~1.9%の場合に中等度リスク、0.5%未満
の場合に低リスクとする案が提示された。

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